「あなた」が何もしないとき未知がひらく

「Vフォー・ヴェンデッタ」

NO.299

 「なぜ死なん?」

 “仮面の下にあるのは “理念” だからさ”

 “ “理念” は決して死なない”

  

この映画は “覚醒” の映画である

“覚醒している V” と、“覚醒していく イヴィー” の物語である

この映画は2006年の公開だが、当時はこの映画の魅力にはまってしまい

また、“V” の魅力にも惹きつけられて

映画館へⅣ回(おしい、あと1回だった)も観に行った映画である

その後、原作本も読んで、“V” の大好きな「巌窟王」も読んだ

Vクッキングの「目玉焼きパン」が、「エッグインザバスケット」だということも知った

それくらい、この映画にハマっていたのである

当時は「イヴィーが『恐怖』を超えるときのシーン」を観ても

なんとなく生まれ変わったのだろうな程度の理解しか得られなかったが

今では、ちゃんと解るのだ

「あのシーン」は、「恐怖」を超えたことで “覚醒” を得ているのである

「恐怖」を捨てるというのは「自分=自我」を守らなくなったということであり

「自分=自我」を捨てたということである

このときに “「自分の命」より大切なもの” が

“そこに現れている” のである

これが “覚醒” のプロセスである

あと、「セリフ」もシェークスピアの作品から引用されたりしているため

とても美しいのである

  

さて、“V” と「イヴィー」とが初めて出会うシーンである

イヴィーが、フィンガーマン(秘密警察)に襲われている時に

“V” がやって来てイヴィーを助けるのだ

そして、助けた後に自らの紹介を兼ねて、イヴィーに「高らかに口上する」のである

このシーンがまた、かっこいい

セリフが、見事に「アルファベットのVの韻」を踏んでいて、とにかく美しいのである

是非、“Vの声”(英語バージョン)にして、この映画を観てほしい

以下に、“V” の口上の翻訳を小説本より引用しておくことにする 【カッコ】内は筆者加筆


「ヴァィオラ!」


「ある見方をすれば、場末のベテラン芸人は、犠牲者かつ悪役として、他者の代わりに、運命の浮き沈みにより配役されるのだ」


「この外観、単なる虚栄心の飾りにあらず、民の声の痕跡である。


これ、今や空ろなり、消失せり。活力にあふれた声、かつて崇められしが、今やそしらるる。


しかし、過ぎ去りし苦悩、勇ましく降臨す、今や鮮烈に立ち上がり、厳かに宣言す。


これら腐り切った有毒の害虫どもを打ち破らんと。


彼奴らは邪悪の前衛となり、意志の力を粗暴に不埒に、かつ貧欲に侵すことを許すのである。


答えは唯一、“復讐”である。
血の復讐は、真実を語ることや正義の価値のために、虚栄のためでなく、祈りのために行われる時、いつの日か警戒と高潔性の正しさを証明することとなろう」

  
  【映画では、ここでVが、「おっ ほっほっほ」とお茶目に笑う】


「しかし、まことにこの他言なるヴィシソワーズ、あまりに冗長に相成ったゆえ、ただ一言で述べん。


あなたにお会いできたこと、大変な名誉で御座います。


わたくしのことは“V”と呼んでいただければありがたい」

  
  【ここで帽子を取って深々とイヴィーにお辞儀をする】
  【そしてイヴィーは言う】

「あなたは、何て言うか・・・頭がおかしい人なの?」

Vフォー・ヴェンデッタ

  

このように、この映画は「能」なのである

「能」で、面(おもて)を付けている者は、全て “霊” であり

そのほとんどが “怨霊” である

その “恨みを持って亡くなっていった者(怨霊)” に舞台に上がってもらい

そこで「大活躍してもらう」ことで、その “恨み” を鎮めてもらう

その “鎮魂の儀式” が「能」なのである

そして余談だが、能舞台の「鏡板の絵(背後の絵)」は、“松” だけである

ここにも “誰か” が隠れているのである

  

そして、ラストシーン

広場に集まった人々の誰もが仮面を被っている

この中には劇中で亡くなった人々も居る

その皆が、自らの手によって仮面を外していく

これは、もう自らを装わなくてよくなったからであり

“本当の自分に戻る” ということである

そして、皆が “そこ” を生き始めるとき

そこに “本当の調和” が生まれてくる

これが “本当のワンネス” であり

このとき “新しい世界” に移行するのである

  

さて、とても仲良しなこの2人なのだが

このほかにも、至る所から魅力があふれ出している映画である

そして、間違いなくこの作者は “真理” を知っている

是非、観てほしい映画である

  

最後に、この映画の冒頭に出てくる “理念” については、下記の記事を参考に